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アメリカを訪れてまず驚くのは、その途方もない広さであり、千差万別の文化や人種との出会いである。グランドキャニオンの大自然を目の前にすると思わず畏怖の念に身がふるえるし、摩天楼のニューヨークの街を歩くとなんとも言えぬエネルギーに圧倒される。そして、いったいアメリカとはなんなのだろうかと、とまどってしまう。「合衆国そのものが本質的に最も偉大なる詩である」とは国民的詩人ウオルト・ホイットマンの言葉(「草の葉」序文)であるが,アメリカは昔も今もなにか心をひきつけるものがあるようだ。


このとらえどころのないアメリカを映像で描く企画を思いたったとき、スタッフはいくつかの仮説を設定した。一番なじみやすいのは、旅をしながらアメリカを知ることである。だが、ありきたりの紀行ものにはしたくない。そこでまず、アメリカなるものを生んだところ、アメリカのルーツとも「聖地」ともいえるような場所にしぼって選んでみた。

そこには歴史があり、新大陸への希望や夢があり、苦闘や挫折の跡があるにちがいない。そこには歴史にかかわった有名無名の人物がいるはずだし、いまも住んでいる人々の生活があるはずである。その場所を旅情豊かに描くこと。映像の国なので、古い写真やなじみの映画も残っているだろう。そして、自由と民主主義をかかげる理念の国なので、必ずその場所にふさわしい「言葉」が残っているはずである。訪ねた場所のストーリーの最後を「言葉」で結んだのは、まさにそれがアメリカでもあるからである。


こうしてわれわれは50ヶ所を選んだのであるが、あらためてアメリカの物理的な広さとふところの深さを実感することになった。アメリカへよく旅行をする人でも、ヘレン・ケラーの生まれ故郷アラバマ州タスカンビアや、ライト兄弟が世界で初めて動力で飛行機を飛ばしたノースカロライナ州アウターバンクスのキル・デビル・ヒルズや、広さが東京都の1.5倍もあるテキサス州のキング牧場を訪れたことのあるひとは少ないだろうと思う。

最近、アメリカの大富豪ウォーレン・バフェットが資産300憶ドル(約3兆5千憶円)をビル・ゲーツ財団に寄付したニュースが人々を驚かせたが、その先駆者のひとりがピッツバーグが生んだ鉄鋼王アンドルー・カーネギーだったことも知ることができる。その意味でも、このDVDアメリカ紀行は、夢あふれ新鮮な知的興奮を与えてくれるはずである。アメリカがはじまったニューイングランドから東部海岸をくだり、南部から中西部へ、そして最後のフロンティアと呼ばれたカリフォルニアやアラスカへと旅をする気持で観てもいいし、行ってみたいところ、懐かしいところから観てもいい。この企画を知り試写を見たアメリカ人が感動して、これこそアメリカ人に見せるべきだと話していたことも印象的であった。


おわりに、「なぜいまアメリカなのか」ということにふれておきたい。21世紀のテロと戦争のなかでアメリカのイメージが大きくゆらいでいるが、戦後、アメリカの自由思想と楽天主義の教育をうけて育ち日本の繁栄を支えてきた中高年の人たちの多くには、あの「良きアメリカ」はどうなったのかという思いとノスタルジアがある。

また日本とアメリカとの関係が良かれ悪かれますます緊密になっているが、われわれは、とくに若い人たちは、アメリカのことをどれだけ知っているだろうか。他国とつきあうためには、相手の良さと痛みを知ることがなによりも大切だと思う。このシリーズは、そのすべてに応えるものではないかもしれないが、かなりの満足感を与えてくれるはずである。


── 「アメリカ・魂のふるさと」 制作プロデューサー 内田義雄